サクラダリセットについて。

こんばんは。指名を受けた白玉です。遅れてしまって大変申し訳ありません。
本のレビューでもいいとのことなので、最近読んだ『サクラダリセット』についての感想を書きたいと思います。
ネタバレ含みますので、読みたい方は注意してください。その都合で先に言っておきますが、つぎは「ぐっぽ」に回したいと思います。

あらすじ
物語の舞台は能力者の集う街、咲良田。ヒロインの美空は、「リセット」という言葉を使って世界を三日ぶんなかったことにすることができる。
主人公の浅井ケイは、世界がリセットされても記憶を失わない能力持ち。二人はコンビを組んで「奉仕クラブ」という、ボランティア活動に近いものをやっている。
ある日二人に依頼が舞い込む。内容は「死んだ猫を生き返らせてほしい」というものであった。
その依頼を達成するために、主人公たちは世界を「リセット」し、猫を助けようと行動する。
しかし、その途中で、不可解な謎と遭遇し、主人公たちはこの依頼の裏の意図に気づきはじめる。


この作品は、角川スニーカー文庫から出ている、いわゆる「ライトノベル」です。
スニーカー文庫はこれの宣伝にかなり力を入れていて、実際に売れているらしく、自分の近辺の本屋では全く売っていませんでした。

内容は、
今日行われたrukeiのゼミの言葉を借りれば「SF日常系ミステリ」というような内容。
世界を揺るがすような危険ではないが、自分の命は危険にさらされるかもしれないような事件。その真相を、強力ではあるが万能ではない「リセット」という能力を用いて解決していく。
プロットはそこそこ面白かったが、それを運ぶキャラクターがあまり魅力的ではなかった。
主人公は、過去にトラウマを抱えた、少しひねくれた諦観系主人公。下でしみんが挙げた米澤穂信の「小市民シリーズ」の主人公の小鳩くんに近いタイプ。
最近のライトノベルではよくあるタイプな上に、特別な魅力もなく、物語の多くが彼の視点で進められることですでに相当うんざりした。さらに主人公は自分が直に関わっている物事に対しても、他人事のような描写をするので、感情移入もしにくい。(主人公の性格というよりも、作者の力量かもしれない)
ヒロインは「かつて無感情でしたが、主人公君にあてられて感情を少しずつ学びました。今は主人公らびゅ」というスタンスで個人的にはこれもライトノベルではありがちで、面白みのないキャラクターだった。
そして事件の犯人も「根はいいやつだけど、やり方を間違ってるだけなんだよ!」というキャラクターで、もはや閉口である。
ラストは「いいやつだけど聞き分けのない犯人を、とりあえず主人公が倒して説得」という展開で嫌気がさした。
キャラクター、その設定、すべて最近売れているライトノベル劣化コピーに見えてしまった。
前々回のミステリーゼミで「日常系ミステリーでは、魅力ある人物の描写も大切だ」ということを言っていたが、これを抜かすと作品はここまで面白くなくなってしまうと今回身をもって実感した。
いくら人格を批判されても「小市民シリーズ」の小佐内さんは作品に大事な要素なのだ!

もしかしたら、この作品はライトノベルなんて普段読まない人間が読んでこそ面白いのかもしれない。そういう意味では、大学読書人大賞にも勧められる作品ではないだろうか!

最後にもういちど、次はぐっぽです。よろしく!