講演会対策:埴谷雄高『死霊』ゼミ

<広告のない文芸誌>モンキービジネスの最新号を買いました。
まさかの最終号でした…昌鹿野。ということで11月29日の新宿紀伊国屋サザンシアターにおけるトークショーに行くことにいたしました。電話したらあっさり予約とれたんで興味ある方はどうでしょうか。

はい、まずてめぇは誰だということで。
現在学部3年の仁勇といいます。あ、これは苗字ではなくていわゆる下の名前です。どんな読み方をするかは閲覧者のご想像にお任せしたいと思います。

講演会対策ゼミ2発目は埴谷雄高の『死霊』(講談社文芸文庫)を主にあつかいつつ、来週(11月5日)の講演会の講師でいらっしゃる笠井潔さんの矢吹駆シリーズ第4弾『哲学者の密室』(創元推理文庫)とドストエフスキー『悪霊』(新潮文庫)を引き合いにださせてもらいました。

これら3つの小説は時代も構成もまったく合致しないものですが、ある観念に突き動かされた個人の物語の集合体という意味では通底するものがあるのではないかと考えて比較し論考しました(このとらえ方さえもたいそう表面的なものではありますが)
とくに「死」の理論について。あとは埴谷雄高の説明をしたり、『死霊』の<自同律の不快>なるものをあくまでわかりやすく解説し、解釈をしてみたりしました。

このゼミの資料収集のために夏にジュンク堂(池袋)へ行ったらちょうど埴谷雄高島尾敏雄の特集(双方郷里が福島県小高町ということにちなんで)がロビーに組まれていて、そこから『死霊』も手に入れることが出来ました。

じつはこのゼミを行うにあたって、通っていた高校の図書館の先生に大変なご協力をいただきました。当人も大学時代に埴谷を研究されており、法大の立石先生に教わっていたということでお忙しい時期に無理やり予定をねじこみ…貴重なお話と死霊を頂きました。本当にありがとうございました、この場を借りて申し上げます。
そこで国立国会図書館になら笠井さんが15年ほどまえ、埴谷が亡くなったときの「情況」に寄せたエッセイがあるとのこ資料があるということでおもむいたのですが、OPACで探したらなんと「関西館」にのみ現存すると大変色よい返事を…いやいやいや、間に合わないでしょう。
ということで笠井さんの「半世紀後の『死霊』」論は当ゼミに盛りこむことが出来ませんでした。端的にいえば完全に不完全燃焼です。しかたがなかったですね。貴重なエッセイだと思うので古本で当時の情況誌を探すか、国会図書館の関西館へぜひ!
文学会員の方はすぐそばにあるのでどうぞ。


さて、僕は今年の講演会においてまがいなりにも先導する役割を担っているのですが、おかげでいままで進んで手に取らなかった評論系の文章も自発的に読むようになり、ようやっとモンキービジネス以外の文芸誌をとっくりと読むような人間になってきました。

この講演会という企画は講師を個人が推薦し、その後投票というかたちで決定するので推薦者以外の会員方にはけっこう触れたことのない作家や分野、書籍をあつかわなければならないのですが、むしろ自分の守備範囲を拡張させるという意味ではものすごく有効なものです。最初は全く興味を持ちえなかった本の扉がおもくておもくて開けるのが億劫な気もしますが、いざその未開の泉のようなものにどっぷりとつかってみてそこから上がると何よりいままで読んできた本が全く異なる観点から読むことができてしまうというなかなか楽しいことが出来るようになります。
それを積極的に求める方がもしいれば、このような企画を立ち上げてみたり、中央大学文学会に入ってみると良いかと思います。


さて、といいつつだいぶ脱線しましたが、本講演会は来週土曜日(11月5日)というところまでせまって参りました。
本講演会では笠井潔さんのサイン会も催しますが、サインの対象物は笠井さんの著書に限定させてもらっております。色紙はご遠慮ください。
中央大学生協書籍売り場のコーナーで当日購入していただいても構いませんが、万一部数が尽きることを考えると事前にお持ちいただいた方がよろしいかと存じます。

では当日お待ちしております!