【推薦文】モモ

 この記事では会員が作成した『モモ』の推薦文を公開致します。
(推薦文とは→http://d.hatena.ne.jp/chuo-bungakukai/20161022/1477118453


[本紹介]
ミヒャエル・モンデ『モモ』大島かおり訳 1976年、岩波書店/2001年、(愛蔵版)岩波書店/2005年、岩波少年文庫


[あらすじ]
時間どろぼうと,ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子モモのふしぎな物語.人間本来の生き方を忘れてしまっている現代の人々に〈時間〉の真の意味を問う,エンデの名作.
※上記の文章は岩波書店のホームページ(http://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN4-00-114127-2)より引用致しました。


[推薦文]
あなたは時間に追われていませんか?
せわしなく街を歩く人々、列に並び順番にお金を払って機械的に食事を済ます人々、お金だけを与えられて一人にされる子どもたちや、建物の中で頭のよくなる遊びをする子どもたち。
昔は、だれかひとりぼっちの者がいれば近所みんなで助け、客は狭い居酒屋で思い出話に花を咲かせながら夜を過ごしていました。
子どもたちは、なにも持っていなくとも、野山を駆け回り、広い空想の世界で遊んでいたはずでした。
「時代が変わったんだ」という言葉からは、逃れられないように思われます。
例え灰色のつまらない日々であっても、社会が動く通りに動かなければ、私たちは生きていけないのです。

しかし、それが灰色の男たち―時間どろぼうに時間を盗まれているからであったらどうでしょうか。
そして、私たちがそれに気づいていないのであったら?
社会に縛られない人々を見て、「自分より彼らの方が自由なのではないだろうか」と考えたことのある方もいるのではないでしょうか。
主人公のモモはそんな存在です。
時間に縛られることのない浮浪児のモモは、時間をかけて「人の話を聞くこと」を特技とする女の子です。
モモが話を聞けば、悩んでいる人は自分の意志をはっきり見つけ、喧嘩をしていた人々は仲直りをしてしまい、人々の時間を盗んだ時間どろぼうさえも自分の正体について話してしまうのです。
モモがいたらどんなに良かっただろう、私たちはそう思ってしまいます。
しかし、盗まれた時間を取り戻してくれる女の子は現実には存在しません。
あなたが時間に追われ、目に映るなにもかもが灰色になってしまった時には、きっとこの物語を思い出すでしょう。
時間は盗まれてしまっただけです、取り戻すことができるのです。
そう考えるだけでも、未来に希望が持てませんか。
時間を取り戻してくれたモモのように、だれかの話を、または自分の話を、時間をかけて聞いてみてください。
それがどんなに大切なことか、きっとわかってくるはずです。